~すべては膵島移植実現のために~松本慎一(全文転載)

http://students.umin.jp/files/no-13-log.pdf
第13回勉強会議事録 「世界を股に夢を追いかけて~すべては膵島移植実現のために~」医師のキャリアパスを考える医学生の会

原文
<第 13 回勉強会> 「世界を股に夢追いかけて~すべは膵島移植実現のため」
以下は原文をTXT化しました。・・・一部修正もしています。

<第13回勉強会>
「世界を股に夢を追いかけて
~すべては膵島移植実現のために~」

主催:医師のキャリアパスを考える医学生の会
講師:松本慎一(米国ベイラーオールセインツ膵島移植研究所ディレクター)
場所:順天堂大学8号館1階3番教室(大学院教室)
日時:平成23年5月21日(土)
議事録:嶋田裕記

(司会)
お手元の資料のご確認をお願いします。

アンケートと学生の膵島移植に関する資料、松本先生の資料の3種類を配りました。

本日のプログラムについてですが、後半のプログラムに変更がございます。
前半に移植医療、後半にディスカッションでしたが、前半にディスカッションを行い、後半に質問タイムにしようと思います。
アンケートは休みの時間にお書きになってください。

今回の勉強会では移植医療、臨床研究、キャリアパスをキーワードにしたいと思います。

それでは、第一部をはじめさせていただきます。

東京女子医科大学3年の秋葉春菜といいます。
まずは膵島移植糖尿病についておさらいします。
100万のランゲルハンス島があります。
人ではベータ細胞がメインです。
空腹時、肝臓からグリコーゲンが出され、血糖値が維持されています。
食事をすると膵ランゲルハンス島ベータ細胞からインスリンが分泌されています。
糖尿病は病態生理から見て1型、2型にわけられます2型が95%をしめています。
1型糖尿病はベータ細胞が自己免疫機能によって障害されることによっておこる病態です。
2型の糖尿病はいわゆる生活習慣病とよばれ、遺伝、環境要因があります。

医学の歴史を紐解くと20世紀は感染症を中心とする急性疾患の時代、21世紀は糖尿病を代表とする慢性疾患の時代です。
WHOによると人類の脅威とされています。
その理由として慢性コントロールを要し、それが難しかったことがあげられています。
また、糖尿病の治療には非常に医療費がかかるもので、このままだと日本の医療が崩壊してします。
根本的な治療は今までございませんでした。
ここで脚光を浴びているのが膵島移植です。
ドナーから膵島細胞をとってきて、レシピエントの門脈へ流すことで生着させます。
現状では二回の移植後70%はインスリン注射から離脱します。
2年で50%、5年で20%に下がります。
慢性のコントロールがこれからの鍵になると考えられます。
このまま続けていると、医療が破綻してしまうので、膵島移植が救世主となります。
以上で発表を終わります。


次に、松本先生のご講演に移りたいと思います。

神戸大学卒業後、大学院で研究をはじめました。
ミネソタ大学に留学後、米国北西部のはじめての膵島移植、また京都大学にて日本で初めての膵島移植をされました。
現在は、膵島移植の標準治療の確立のために研究されています。
また、東日本大震災の医療支援のプロジェクトをされていて、医療支援の現場からの声も聞けたらいいと思っています。


(松本先生)
本日はこのような機会を与えていただきありがとうございます。
みなさんいろいろなレベルの方がいらっしゃると思うので、助かりました。
ユニークな経験を交えながら講演していこうと思います。

大阪出身でして、大阪弁を講演でしゃべっている気はなかったのですが、丁寧な大阪弁だといわれました。
まず、第一外科に入局しました。
父をがんでなくしていまして、母親が世界中のどこかで研究している医者がいるはずだと、言っていまして、それで研究で今治らないような病気をなおす医者になろうと決心しました。

内科は診断学が中心で、診断したら終わりのところがあって、腎臓移植の講義をうけたときの移植後の劇的な変化に驚き、移植外科医になろうと思いました。

泌尿器科に入局届をだしたとき、第一外科の医局長に翻意をうながされ、出直したというわけです。
私の最初の研究は、膵臓移植のための膵臓保存です。

ミドリ十字は血液製剤の会社で、パーフルオロケミカルという人工血液を作っていました。
この人工血液を使って膵臓を酸素化すればうまくいくのではないか、という研究を行っていました。
この保存方法は、パールフオロケミカルと通常の保存液の二つの溶液が二層になるため、二層法保存という名前を付けています。
他の研究者には臨床応用できないのにといわれたが、絶対してやると思って、スペインの移植学会でミネソタ大学のサザランド教授に直訴してOKと言われて喜んだのですが、まぁなんでもOKという人でした。

そのころDr.へリングもサザランド教授にスカウトされていました。
ミネソタ大学は初めて膵臓および膵島移植を行ったところなので、さらに盛り上げようとしていました。
そこでミネソタ大学の膵島移植を立ち上げました。
立ち上げに際して、世界から膵島移植の専門家をよびまくって、勉強していきました。

一方で、二層法の膵臓移植前の臨床応用をしようとしていました。
臨床の膵臓摘出は通常、夜中にあるので、夜中から朝にかけて二層法膵臓保存の研究を行い、膵島移植の研究は平日にやっていました。
あまりに大変なことを見かねたDr.ヘリングから人を呼べばいいんじゃないかと言われ、後日、日本人を呼び寄せて、暇ができました。
さらに研究したかったので、シアトルに移りました。

シアトルにて移植をおこなったとき、二層法の膵臓保存を導入するという画期的な膵島移植の改善を図りました。
世界中から声がかかりました。
ハーバードとかUCSFに決まりそうになりましたが、京都大学からよばれて、日本でも面白いということで、日本に行きました。
2006年に藤田保健衛生大学に日本で研究して、教授になるために移りました。

日本で初めて膵島移植を行ったわけですが、まず、脳死ドナーの不足がありました。
年間五例くらいです。

もし心停止ドナーを使えたら、膵島移植ができるのではないかと思いました。
心停止ドナーからの膵島移植は当時不可能と言われていたのですが、ただ改善すればできるのではないかと考えていました。

膵臓の急速冷却、あたらしい保存液、膵島にやさしい分離法、新しい純化溶液などが開発されました。

開発された溶液はミラクルキョート溶液という恥ずかしい名前になりました。
トレハロースという、昆虫類が持っていて、乾燥を防ぐ効果があります。
これはコラゲナーゼをほとんど阻害しません。
加えて、カリウム濃度が低い。
一般的な~溶液はカリウム濃度が低い。
それに粘度が低いのです。
膵島分離には最適でした。
ミラクルの部分ですが、トリプシン阻害剤ですね。

ミラクルキョウト溶液を使うときれいに膵島がとれます。
40万個とれると、80kgの患者さんでも体重あたり5000個以上移植できるため、この数字を目標にしました。
一回目は35万個とれて、二回目の後、離脱できました。
私がいる間に8人の患者さんに膵島移植を行い、3人の患者さんがインスリン離脱をできました。
複数移植した5名中、3名できてそれほど悪いものではない結果でした。
加えて、膵島分離の成功率がミネソタ大学で25%、マイアミで43%で、心臓死例としては京都での83%は非常によい成績でした。

生体ドナーの場合は体尾部を切除して、そこから膵島をとっていきます。
生体膵島移植の課題として、ドナーの安全性があります。

バンクーバーフォーラムで国際基準が確立。
ドナーのインスリン分泌がどれくらい保たれていればよいかという基準ができました。

京都大学の方法で膵島分離に関しての問題はクリアできました。
体尾部からどれくらいの膵島がとれるかの確認が重要であります。
この課題はシアトルにいる際に人の膵臓を用いて体尾部のみを使った膵島分離を実施し移植に必要な数が取れることを確認していました。

2005年に実施して、世界初の生体膵島移植にはジェームズ・サピロンに来てもらいました。
移植前後で血糖値の変動が劇的に改善されました。
特筆すべきはインスリン注射から一度で離脱できていること。
これをランセットという論文にだしたら、ランセットの編集者が現行をとどめない形で編集してくれ、素晴らしい文章になりました。

しかし、いくつか課題が残っています。
それは、二回の移植が必要、また、2年でインスリン離脱ができるのは半分になってしまうことです。
ただ、8割はインスリン離脱できなくても、コントロールがよくなる。
微調整を膵島がやってくれているからです。
また、膵島にはアルファ細胞があり、低血糖発作がなくなる。
免疫抑制剤はラパマイシンが重要で、ラパマイシンは、もともとイースター島で見つけられた抗がん剤、抗真菌薬でした。血糖値を下げる効果があります。
ただ副作用がおおいため、ラパマイシンフリーのものが求められています。

私が考えている膵島移植の進化系について紹介します。
現在の膵島移植の適応である血糖値が不安定な1型糖尿病の患者さんの人数は少ない。
しかし、膵島移植の効果が向上し、ラパマイシンフリーにして、副作用がないならば、多くの1型糖尿病の患者さんがうけたいという風になるでしょう。
そのような展望のためには更なる膵島分離法の改良が必要です。

膵島保存するとき、膵管保護法を追加しました。
ただちに膵管に保護液を注入する方法です。

日本で開発した方法をアメリカの脳死ドナーに導入したらどうだろうか。

まず、二層法は黒田先生という私のボスが編みだしました。
河村先生に混ぜろといったのですが、パーフルオロカーボンに水に対する親和性がなくて、二層になってしまいます。
じゃあ、その二層の間に膵臓をいれろということで非常にいきあたりばったりでできたものです。
心停止になったとき膵臓は阻血によるダメージをうけてしまう、それを二層法で軽減するという論文もあり、このデータは心停止ドナーのときの礎となりました。

二層法保存とそれ以外の比較、安全性の担保などについてのfigureの紹介です。
二層法で、短期保存と長期保存の比較で、数が増えることを示したfigure。
パーフルオロカーボンの酸素化をしなければならないので、必ず酸素ボンベを持っていかなければならず、よく止められ、空港でも止められました。
そこで、先に酸素化しておくことによって、酸素ボンベフリーになる方法を編みだしました。
18時間のときもオリジナルのものとATP濃度がかわらないものとなりました。
酸素ボンベが必要な二層法はあまり使ってもらえなかったが、これにより使ってくれるようになりました。
大体3割から4割の膵島移植まえの膵臓保存につかわれるようになりました。
これにより世界標準に近づいたとおもったのです。

しかし、カバレロという人物が二層法にはメリットがないという論文をだました。
2009年に対抗した論文をだしました。
UW保存群、素人が行った二層法、プロが行った二層法での比較です。
さらにベイラーの統計学者に、世界中の論文を調べてもらって、他の論文は二層法で有意差があるということを示す論文を書いてもらいました。
二層法に加えて、膵管保護であるDuctal injectionを導入することにより膵島分離失敗がなくなりました。

ある学会で膵島分離にこまっているという議論の際に、NIHの人がいるところで、プレゼンできる機会をえられ、このデータを示しました。
これによりNIHのグラントがとれました。
そして、最新のベイラーのプロトコールでは免疫抑制剤からラパマイシンをのぞいたため有意に有害事象が減少し、一度の膵島移植でインスリン離脱ができるようになりました。

論文のタイトルが長いのはレビュワーからいろいろと意見をもらいすべての要望を満たすためです。
今後、この方法を用いると5年で60%ぐらいまでインスリン離脱に持って行けると考えています。

移植したときにどのくらい生着しているかをモニタリングするのがむずかしい。
濃度をみたらすぐわかるのですが、空腹時血糖値とCペプチドレベルの傾きが生着率を表すのではないかと思って、この傾きを利用した指標を作りSUITOindexと名前をつけました。
SUITOは日本語から無理やりつけてみました。

SUITO indexはモニタリングに使えます。
長期維持戦略としては、最初にSUITO indexを高くとり、落ちてきたときに、もういちど移植をするという戦略をたてました。

今年のアメリカ移植学会で、長期のインスリン離脱と、すぐにインスリン注射が必要な状態にもどるのはどうちがうのか、自己免疫がもう一度起こるのではないか、というわけで自己抗体に対する反応性をみました。

GAD65をそのまま調べるのではなくて、ペプチドをきってあわせる。
切断したもののクラスタにそれぞれ、T-Cellを反応させている。
いろいろなサイトカインなども調べています。
反応性の低い患者さんから移植したらいいのではないかということになりました。

→SUITO indexとTセルの反応性で長期離脱できる。
→膵島分離は100%
→ベイラープロトコルはラパマイシン使っていない。

ただQOLの判断は医療者ではできない。
患者さんが決めるものである。うれしがっていてもしょうがないということでアンケートをとりました。

移植医療に興味がありますか92
期待している89%
きくと思う89%
膵臓きく82%
コストは高い100%
副作用は問題98%
豚がベースでもうける63%

抑制剤について知っている65%
副作用知っている59%
一生必要なのを知っている66%
日々の問題だと知っている79%
副作用は問題84%

膵島移植の課題が解決したというのは時期尚早であり、課題はドナー不足、免疫抑制剤の副作用と費用などがあります。

少し探索医療の話にうつります。

一番上の矢印は探索医療のよくきかれるコンセプト、しかし、ほんとは違うものだと思っています。

私のイメージはちがっていて、American journal of transplantationに出されたものなんですけど、課題があって、課題を解決するために基礎研究にもどる。

いけたとおもっても、だめだから、また基礎研究にもどると。
PDCAサイクルに似ています。
こういうスパイラルに回っていく。
これが正しいtranslational researchです。

基礎のものが臨床応用できただけでは誰もうれしくない。
意味のある医療を考えるということからできる医療が幸せではないか。
この医療を受けられるようになってよかったと患者さんが思えて初めて意味があります。

治らない病気を治すという根本に立ち戻ると、臨床応用の質を高め患者さんが幸せだとおもうことが重要なのです。

大塚製薬に呼ばれたときに膵島移植のプランかいてみました。
同種移植では数がたりないから、マージナル日本の心停止、生体移植ドナーでやっていく。
数をふやしながらやっていく。
他にもベータ細胞再生、免疫寛容なども研究をおこなう。
1型から2型まで治る病気に変えていく。

ただ再生医療は無理だ、難しいと引き気味です。
安全性の担保など難しく、また米国では1型糖尿病のためのドナーは不足していません。
ただ2型に関しては全然数が足りない。
間すっとばして、バイオ人工膵島移植をしたいという話になりました。

2008年にカンファレンスで説明して、大塚製薬工場から研究費をいれてもらうことができました。

衝撃なことがあって、International Diabetes Federationの学会が韓国で行われたのですが、その学会でDr, Elliottからブタの膵島の商品化の話を聞きました。
なぜか和室に私とDr. Elliottが招待され、韓国の方と私と彼だけという状況で、親密に話ができました。
Dr. Elliottはこの研究を50年もやっていいて、最新の方法ではバイオ人工膵島を腹腔内に抑制剤なしで移植しています。臨床応用をロシアとニュージーランドでやっており。
全例で低血糖発作が無くなっています。

3月11日に大塚製薬にすごい人がいるということで、大塚一郎社長に話して、そのまま大塚製薬の重役とニュージーランドに飛びました。
今回日本でやっていこうということで、もう4月12日にお金をいれるというはなしになり、およそ3億円の資金提供がきまっていました。

日本でこの臨床応用やろうぜというカンファレンスを行いました。
日本でこれを導入するにはどうしたらいいのか、マーケティング、特許など20数名のプロジェクトチームを立ち上げました。

3日間缶詰でした。
非常にエキサイティングなものでした。

日本で、世界でもやられていない異種移植がやられるのではないかという余韻を残しつつ帰ってきました。
膵島移植は糖尿病の根本的な治療となりうる。
パラダイム転換ができる。
バイオ人工膵島移植が膵島移植の切り札となります。

探索医療の最終的な目標は患者さんの満足である。

Living cell technology社の人から、いつたおれるかわからないところから、動けるようになったという患者さんの声を聞きました。
大塚製薬も、患者さんのためなら少々無理でもお金を出します。

患者さんのためにやるのが探索医療であり、医学研究である。


19世紀イギリスのウィイアム博士が羊の膵臓を移植しています。
ちょうど一〇年後にライト兄弟、二〇世紀は宇宙に飛ぶと、二一世紀には細胞移植が始まるといいなと思っています。


最後に、皆さんにこの言葉を伝えたいと思います。

If you can imagine it you can achieve it.
人は想像できることは実現できる。
If you can dream it you can become it.
夢を持ち続ければなりたい自分になれる。


【以上】





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